▪️ざっくり言うとどんな本?
いま世間を賑わせているAIについて、その正しい知識を数学者であり、「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトディレクターの新井紀子さんが分かりやすく解説しています。AIにできることとできないことを明確にし、子どもたちの現状と対比させることで社会と教育の未来に鋭く切り込んでいく本です。
▪️もうすこしだけ詳しく言うとどんな本?
「AI」と「AI技術」を混同しているから、世間のAIに対するイメージが肥大化してしまっているのだそう。真の意味でのAIは、まだまだ登場しない。しかし、AI技術を駆使した「東ロボくん」はすでにMARCH合格レベルに到達したことも事実。そんなAI技術にも出来ないことの1つが「意味を理解する」ということ。つまり、読解ができないのです。では、私たち人間は読解ができているのでしょうか?本著の後半では、著者が中心となって開発、実施した「読解力」に関する調査をもとに、子どもたちが如何に読解ができないかが書かれています。未来の鍵を握るのは「読解力」なのか、「読解力」とは何なのだろうか、深く考えさせられます。
▪️この本を読んでみて
−新しい知識を受容する怖さ
まず、自分自身がいかにAIに対して誤った考え方を持っているかを痛感しました。また、社会でも相変わらず誤った概念が広まっている現状があります。ありきたりな感想ではありますが、無知のまま、確かめもせずに新しい言葉や考え方を受容してしまうのは恐ろしいと感じました。そして、能動的に知識を吸収していくことが必要だと痛感させられました。
−「読解力」とは?
この本のキーワードの一つとして、「読解力」があげられます。読解力がない子供達に対して警鐘が鳴らされていますが、果たして自分の読解力はどれほどなのか。純粋に、本を読みながら焦っている自分がいました。いざ読解力がないとわかれば、どう身につければいいのかを考えてしまいます。しかし、この本に読解力を身につける方法は書かれていません。調査をしてもなお、習得方法についてはわからなかったとありました。しかし、本著を通して読解力が身についていない子供達が多いと判明した現在、次は方法論についての議論がなされるべきなのではないでしょうか。
▪️最後に
この本を読むことで、AIついての考えや見方がかなり変化しました。私たちが「読解力」という基本的なところで躓いているという危機意識が生まれたと同時に、日常に存在するAI技術や間違った情報に敏感に気づけるようになりました。未来の教育者を志す人には、是非読んでもらいたい一冊です。この本があなたにとって「AI時代の教育」を考えるきっけになればと思います。
文責:松島響子、樋口悠太