こんにちは、研究所員の齋藤です。
3月2日、株式会社リバネス主催『超異分野学会』に研究所の主要メンバー4人(小西、正木、佐藤、宮本〔敬称略〕)が登壇いたしました。
会場はTEPIA先端技術館。様々な分野・国内外の研究者、中高生などが集まり、お互いの研究を聴き合い、新たなコトが生み出されそうな雰囲気に満ちていました。
今回当研究所としては、初の学会参加となりました。
「変人」ワードは強い力を持っているらしく、当初予定していた倍以上の参加希望があり、80人席が満席になるほどの人が集まりました。挙手をしてもらい確かめたとろ、「変人を科学したい」という好奇心を持って聞きに来てくださった方が大半を占めていました。
一つは、才能ある人(変人)を見つける作業
もう一つは、その人たち(変人)をどう世の中に伝えていくかという作業
どちらも難しい作業ではあるけれども、さらに難しいのはそういった変人を作ることであり、
それはプロデューサーの域であり、教育の域になってくる、
という話でした。
続けて正木先生は教育でそういう人材を「つくりだす」のは不可能であり、
エデュートする、子どもへの働きかけならできる。
きっかけ、環境をどう組み立てていくかを考えなければいけない。
と、子どもに関わる教員や親などの身近の大人の存在や環境づくりの大切さが話されました。
この話からは、教育界、現代社会において個々の変さ、おもしろさを見出し、それを外に開いていく役割を担う存在の本当に必要なのだと感じました。
いわばキュレーターのような立場、研究所の言葉で言えば「変人ソムリエ」の存在です。
いつどこの時代も個人が変さを発揮するためには、その身近にその変さを認め、環境・状況を作る人がいると思いますし、そのような研究分析を出している研究者もいます。(参考:M.チクセントミハイ『クリエイティビティ』)
「変人」の精神、考え方など内的環境を研究しつつも、やはりその人に影響を与えた人や物的環境などの外部環境はしっかり分析していくべきだと思いました。
リバネスの藤田さんもサイエンスコミュニケーターとして、子どもがロボット制作に没頭できるプログラムを実施しています。そこには全国からロボットを作りたくてどうしようもない、授業ではおさまりきれないという子どもが集まり、大学生顔負けにロボットを制作しているといいます。
そして子どもにとって「一緒に完走してくれる大人の存在」は大事だと話されました。
クリエイターや子どもの変さを引き出し伸ばしていく佐藤さん、藤田さんは、もはやその実践者とも言えると思います。
変人はアートする人、変人ソムリエはデザイン思考の人だということ(正木)、プロデューサー的な人の教育は今後必要(佐藤)とも語られ、大変納得でした。
今回は変人代表として登壇した宮本道人さん。
いつもは理系の話は一切出ないといっても過言ではないですが、今回は生物学と変人を結びつけた話がなされ、興味深かったです。
研究対象として省かれる個体は「はずれ値」とされているそうですが、はずれてしまう一個体一個体の神経の違いの研究なども盛んになってくるのではないか、という話でした。
今回が理系も集まる場だったからこそ聞けたのでは、と思います。
今回は研究の提案も様々に出てきました。
・(理系の研究者も多く集まる場であったので)変人の神経、変人を支えた人の神経の研究。
・変な人を阻害する人の研究などなど
最後に質問として学会らしく先行研究との折り合いのつけ方などが出されました。
個性を生かすといった北欧やアメリカなど海外でやられている研究と変人類学研究は同じレールに乗っているのではないか、というものでした。
その答えとしては、
変人は能力としてみるのではなくて、現象とする視座に立ち、
生得的な能力をいかに引き出すのかに焦点を当て、教育プログラムを考えること以上に、内的環境、外的環境、社会など様々な視点から「人間社会のあり方」までみていくような研究にしていきたいというものでした。
が、私自身も研究所の研究員として先行研究に目を向けていきたいと考えさせられる機会となりました。
内容も濃かった上に、異分野の人と知り合え、
また多くの人が「変人」という言葉に興味を示してくださっていることを認識できた時間でした。
この場をセッティングしてくださったリバネスさんには感謝申し上げます。